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3Dプリントをはじめようー機種などの準備 (ver. 2024.05)
Start 3D Printing

revised: 2024 / 05 / 11

INFORMATION

お待たせしました.約3年半ぶりにアップデートしました.

ファブラボ品川にお問い合わせの多い個人ユースなどにおすすめの廉価版 3D プリンタのオススメ機種やフィラメントについてまとめました.
同じ機種を使うと情報やデータも共有しやすいので,購入の参考にされてください.

※このページはアフィリエイト・リンクを含みます.

ここ最近の 3D プリンタのトレンド

廉価版 FDM 3D プリンタを巡る技術は数年ごとに変遷を重ねてきました.今のトレンドに移るまではフィラメントを押し出す方式がボーデン方式からダイレクトエクストルーダ方式に移行する時期だったように思います.ここ最近はより早いスピードで正確に出力するというトレンドが席巻しています. これは新機種に限らず,古い機種についても「ファームウェア」と呼ばれる 3D プリンタを制御するためのプログラムをアップデートする形でハードウェアに大きな変更を加えることなく実現する,ということもメーカー各社が取り組んでいます.


注目したポイント

  • はじめて 3D プリンタを購入される方など,3D プリンタをいじるより 3D プリントをすることに集中したい方向け
  • UI (ユーザーインターフェース) が洗練されていて使いやすい
  • コストパフォーマンスに優れる
  • 出力精度が高い
  • フレックス、ナイロンなどをはじめ、幅広い種類の素材が安定して出力できる
  • サポートの対応が迅速かつすぐれている (日本国内に代理店がある)


Bambulab A1 mini (造形エリア:180*180*180mm)

Bambulab A1 mini

Bambulab A1 mini
Bambulab は 3D プリンタの分野では新興メーカーのひとつですが,元々ドローンで有名な DJI のエンジニアたちがスピンアウトして興しただけあり,モーターの制御に一日の長があるように思います.
圧倒的に便利なのがレベリング,フィラメントのオートカットなどフルオートで提供される機能が多いこと,Gcode を生成することなく専用アプリからネットワーク経由で直接出力できる洗練されたワークフローなど新世代の機種であることを十分体感させてくれます.
※2024.7.29 追記:Bambu Lab のコミュニティ MakerWorld のデータなどを確認していると出力設定 (対応サイズ) が同社の A1 以上のものになっているケースがとても多いです.ご自分でプロジェクトを作成して出力するケースでは問題ありませんが,既存のデータを活用しながら進めたい場合は下にご紹介している A1 以上のクラスを選ばれた方がよいかもしれません.



Bambulab A1 (造形エリア:256*256*256mm)

Bambulab A1

Bambulab A1

2024年4月末から販売が再開されました.造形エリアは 256mm x 256mm x 256mm となり,P1シリーズや X1 Carbon と同じサイズです.エンクロージャーにこだわりがなければ価格も含めてよい選択肢となりそうです.複数のフィラメントを扱いやすい AMS Lite は A1 mini と共用できるもので,エンクロージャータイプで用いる AMS に比べてよいのは最近増えている紙スプールでも使いやすいことでしょうか. 残念ながらリコールがかかってしまい,2024年3月16日現在購入することができませんが,再入荷通知を設定することができるので購入できるようになるのを待ちましょう.



Bambu Lab P1S (造形エリア:256*256*256mm)

Bambu Lab P1S Combo Kit

Bambu Lab P1S
Bambu Lab 社の 3D プリンタでエンクロージャータイプの機種を選ぶ場合に一番安価な選択肢となります.出力に関する機能やアプリ経由での出力など使い勝手は快適ですが,本体付属のパネルがボタン操作式のモノクロ液晶となります.下位機種含め,ほかのモデルではタッチパネル式のカラー液晶が採用されているので少し残念な点になります. フィラメント交換システム:AMS を希望する場合は「AMS Combo Kit」を選択します.



中型 3D プリンタ (造形エリア: 300*300*300mm)

Creality K1 MAX

Creality K1 MAX
ここ 2 年ほど 3D プリンタの出力スピードにフォーカスした新機種投入が続いています.そのなかで Creality 社は K1 シリーズをリリースしていますが,このモデルはエンクロージャータイプで造形エリアが 300mm x 300mm x 300mm となります.大型機種で設置場所を選ぶので購入時は注意してください.新しい機種は円安の影響もあり,価格が高く感じるかもしれませんが,出力時間が大幅に短縮されていることを考慮すると生産性は従来以上のものと言えます.



あると便利な工具などリスト

スクレイパー:刃先が鋭いものの方がプレートと出力されたものの間に差し込みやすいと思いますが,くれぐれも怪我には気をつけましょう

この画像の下にあるのがテープ剥がし.とても役に立ちます

ノズル交換の工具は色々と考えられますが,ソケットとアダプタのセットが使いやすいと思います.お使いの3Dプリンタに合わせてソケットを用意しますが,Bambulab 社の 3D プリンタは独自システムのノズルなので交換用の工具は不要です.お使いの 3D プリンタのヘッド部分の仕様を確認し,MK8 タイプは 6mm,E3D タイプは 7mm のソケットを用意しましょう.

3D プリントする上で揃えておくと便利な工具などのリストをまとめました.

3D プリントしたものを剥がすためのツール:3D プリントする上でビルドプレートに出力したものがしっかり定着して欲しいのとは裏腹に出力後はスムーズに剥がしたいものです.最近はマグネット方式で定着している金属プレートが主流で,プレートを曲げることである程度剥がれますが,それでも難しい場合はスクレイパーと呼ばれる工具の出番です.道具の性質上,刃先が鋭利ですので使用の際は十分注意しましょう.



ノズル交換関連:3D プリンタのノズルは消耗品と考え,出力されたものの様子を見ながら交換していく必要があります.また,ノズル径を変更することで全く異なる表現のプリントを実現することができるのも 3D プリンタでのものづくりの醍醐味です.




ピンセット.画像のピンセットはリンク先の商品とは別のものです

ノリとして用いるヘアスプレー



フィラメントについて

熱溶融積層タイプ (FDM / FFM) 形式の3Dプリンタでは素材に「フィラメント」と呼ばれるストリング状に成形された樹脂を用います。
ファブラボ品川では不定期ですが様々なフィラメントを試すワークショップを開催し、個人ではなかなか揃えきれないものを試していただく機会を設けています。
フィラメントについては別途改めて紹介するページを作成しますが、ここでは簡単にいくつかの種類をご紹介します。素材購入ページへのリンクはあくまでもサンプルで実際にはたくさんのものがあります。みなさんで情報を共有していきましょう。


フィラメント−PLA

3Dプリントをはじめるにあたって手軽に使えることからもっとも触れる機会が多いと思われるのはPLAだと思われます.PLA (polylactic acid、polylactide) とはポリ乳酸のことで,生分解性プラスティックの一種です.PLAについては様々なブランドからリリースされており,すべてについてコメントすることはできません.
様々な通販サイトで販売されていますが、例えばAmazonで「pla フィラメント」で検索するとたくさん取り扱いがあります.
PLAひとつをとっても各社により品質もまちまちで比較的安価なフィラメントで造形や機能の確認をし,高価なフィラメントで仕上げのクオリティのものを出力する,といった使い分けをした方がよいケースもあります.
素材の特性として出力時の収縮は穏やかなのであまり反ることはありませんが、素材が硬く,靭性も低いため,出力後にやすりがけするなどの後加工には向きません.(PLAを効果的に後加工する方法はまた改めて)
最近,従来のものに比べて飛躍的に強度を高めたものもリリースされており,それらはとても高い品質で人気があります.


フィラメント−TPU

ファブラボ品川では毎週のように新しい自助具をデザイン、アップデートして出力していますが、そこで多く活用しているのが熱可塑性エラストマー樹脂の TPU です。
素材そのものの適度な柔らかさと 3D プリントの際の設定により、用途に応じた柔軟性を作り出しています。素材ごとのプリント設定詳細について深掘りされたい方はぜひオンラインセミナーの「スライサー勉強会」に参加してみてください.


フィラメント−PETG

一時期,PLA に代わり大きな支持を集めていたのが PETG です.FDM / FFM 式 3D プリンタの黎明期によく使われていた ABS と PLA のいいとこ取りをしたような素材で,加工時の扱いも楽で靭性にもすぐれ,やすりがけなど後加工をすることもできます.ただし,やすりがけはできるもののやすった箇所が白くなってしまうので,やすりがけ前提でモデリングすることは避けた方がよいです.今後,様々なケースでの採用例が増えると思われます.



フィラメント−ProtoPasta (金属フィラメント)

米国の Proto-pasta 社は 3D プリントを楽しくする機能性フィラメントをたくさんリリースしています。金属配合フィラメントや導電性フィラメントなど使い方を工夫すると<作業>的効果も期待できるようなものもつくれます。リンク先には金属配合フィラメントで出力したオブジェクトを磨き上げるプロセスを紹介しています。