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機能性フィラメント専業メーカー、といっても過言ではありません。フィラメントの品質もよく、3Dプリントを積極的に楽しむための素材をたくさんリリースしている稀有なメーカーです。
3D プリンタの活用法について,今回はノズルを交換することの意味について考えます.
同じ機種を使うと情報やデータも共有しやすいので、購入の際は横のリンク先ページを参考にされてください。
※このページで取り上げる「3D プリンタ」は,すべて「フィラメント」と呼ばれるコイル状に巻かれた樹脂素材を熱で溶かして押し出しながら積層する「樹脂溶融積層タイプ (FFM, FDM などと略されます)」を指します.
みなさんは3Dプリンタのノズルを交換したことはありますか?
通常のFFMタイプの3Dプリンタには直径0.4mmのノズルがついてくると思います.
購入したメーカーによっては付属品の中に交換用のノズルがついていて,なかには0.4mmよりも径が大きかったり小さかったりするものもあります.いつどんな時に必要になるのかな?と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか.
え?ノズルって何ですか?というところからですね.
画像を見てください.3Dプリンタのノズルとはこの部分です.
まさにフィラメントが溶けて出てくるところですが,この部品を交換することができます.
3Dプリンタのノズルとは
2020年4月現在,数万円から手に入る FFM タイプの3Dプリンタは,フィラメントがホットエンドという部分で急激に熱せされ (概ね200℃以上) ,瞬間的に溶けた状態で押し出されることで造形されます.そのホットエンドの一部でフィラメントが出てくる部分がノズルという部品で,0.2~1.2mmほどの直径の穴が空いた通常ねじのついた部品です.
この異なる径のノズルを使い分けることによって造形品質やスピードをコントロールすることができるのです.
大まかに言って,
・解像度を高く精確な仕上がりのものを出力したい:径の小さなノズル
・ラフでいいから素早く結果を確認したい:径の大きなノズル
といった使い分けになります.
ファブラボ品川が共催するメイカソンなどのすぐにプロトタイプが必要になるイベント会場では持ち込む 3D プリンタのノズル径を大きなものに交換しています.なるべく早くアイデアを検証する必要があるからです.
巷には0.2mmというノズルも出回っていますが,今回は大きなノズルに交換する方を集中的に取り上げます.
大きいノズルに交換する目的は,たくさんプリントしたいものがあるときに,クオリティを担保しながらなるべく出力時間を短くすることと言えます.
今回はたくさんの人々が取り組んでいる PPE (Personal Protective Equipment) のひとつ,フェイスシールドのフレームを例に進めてみましょう.
出力するフェイスシールド:3D VERKSTAN (Sweden)
ここではモデルの高さが低く(その分早く出力できる),透明シートの加工が簡単なもの,としてスウェーデンの付加製造コンサルティング企業 3D VERKSTAN が公開しているフェイスシールドを取り上げます.
いくつかのモデルが公開されていますが,ここで出力するのは
・Visor_frame_EUROPE_80mm_4hole_v1.stl
というモデルです.透明シートを通常の2穴パンチで2回穴あけするだけでフレームに取り付けできるようになります.
下の画像のフレーム部の 3D プリントですが,同社の推奨設定をもとにラボで作成した Gcode (3Dプリンタを動かすためのファイル) で出力すると,0.4mmのノズルで50分,1.0mmのノズルで18分ほどで出力されます.
こうしてみると,ノズルを交換するだけで,1台の 3D プリンタで時間あたりに作成できるフェイスシールドの数が3倍近くになることがわかります.例えば 1日5本を目標にしていたものが14本近くになります.1週間,7日間で考えると,35本の目標が97本になるということです.
短時間になるべくたくさんの人々に届けたいのなら取り組む価値があると言えます.
ノズル交換した出力の比較
実際にノズルを交換して同じSTLファイルを出力した際の比較を見てみましょう.
COVID-19 感染拡大の状況を受け,たくさんのオープンソースモデルをたくさんのメイカーたちが3Dプリントしています.
データ提供先の設定ガイドに基づき設定した Gcode* で出力したものをベースに話を進めます.
出力に使用した Gcode* も下記に共有しますので,興味のある方はダウンロードして出力してみてください.リンクをそのままクリックするとブラウザ画面にテキストが表示されてしまうようですので,リンクを右クリックして「リンク先を別名で保存...」してみてください.
*Gcode : 3Dプリンタを動かすためのスクリプトの形式.3Dモデルはそのままでは3Dプリントできず,スライサーと呼ばれるアプリケーションで3Dプリントするための命令文に変換する必要があります.スライサーは本当に奥が深いので,別の機会にコラムにします.
ノズル交換のプロセス
お使いの 3D プリンタによって異なりますが,概ね以下のようなプロセスでノズルを交換します.
- ノズルを加熱する
- ホットエンドの位置を調整する
- フィラメントを少し引き戻す
- スパナとモンキーレンチなどの工具を使ってノズルを取り外す
- 交換するノズルを取り付ける
- フィラメントを送り込みノズルからの吐出を確認する
- ヒートベッドのレベルを調整する
ちなみにラボでは Anycubic 社の 3D プリンタをたくさん使用していますが,メーカー公式サイトの動画で紹介されているプロセスと若干異なり,ホットエンドが格納されている金属ケースは開けずにノズル交換しています.やけどなどを防ぐ意味があるのかもしれませんが,そもそもノズルを温めておかないと樹脂が固まってしまっていてうまくネジを回すことができないことが多いと思うので,実際の運用を考えるとケースを取り外す必要はないのではないでしょうか.
ノズル交換に必要な道具
- 交換用ノズル
- Anycubic 社の Mega シリーズでは従来交換用ノズルが購入時のセットに入っていたのですが,最近のものには含まれていないことも多いようです.交換用ノズルがない場合は購入する必要がありますが,最近は径のバリエーションが多いものが安価に手に入るので,メンテナンスの意味でも揃えておくとよいと思います.
- ボックスレンチ
- Anycubic 社の Mega シリーズで採用されているホットエンドのノズルは 7mm のソケットを使用します.ソケットレンチでも構いませんが,ソケット回転部のあそびの大きいレンチだとネジ山を壊しやすいのであまりオススメしません.
4種類のソケットサイズがまとまったクロスレンチと呼ばれるツールもあります.
工具類は探し始めるとキリがないので要注意ですね
- モンキーレンチ
- ボックスレンチでノズルを回す際,ノズルがついているヒートブロックという四角い部品が回りやすいので,それを押さえるために使います.ペンチやマルチプライヤーなどでも代用できます