COLUMN

EN | JP

新しい3つの手の使い方
「作業療法」とファブリケーション-6

issued: 2018 / 09 / 07

INFORMATION

ファブラボ品川 ディレクター
一般社団法人 ICTリハビリテーション研究会 代表理事
作業療法士
林 園子

今日は、デジタルファブリケーションがもたらす「新しい3つの手の使い方」についてお伝えしたいと思います。

「手を使うこと」と、「作業療法」は切っても切れない間柄です。
時に、病院での作業療法室では、作業療法は「手」を使うことにフォーカスしすぎて、「上肢の運動機能向上訓練は作業療法で」「下肢の運動機能向上は理学療法で」などと分業されてしまったりする位です。
「手の外科専門の作業療法士」はいても「足の外科専門の理学療法士」はあまり聞きませんが。

構成する筋や腱、神経などの要素が複雑で、表在覚・深部覚の感覚点も多く、「目と手の協調動作」や「口と手の協調動作」などという訓練や評価があるくらい、活動や生命維持活動に直結するのが「手」の機能です。

そんな「人の活動」にとって非常に意味深い「手」が、デジタルファブリケーションによって新たな使い方ができるのです。

#1理解するための手
#2つくるための手
#3つながるための手

どれも、「なぜデジタルファブリケーションと関係が?」と思われるかもしれません。
「え?当たり前じゃ?」うーむ。でもね、例えば、みんな「つくって」いますか?

#1理解するための手

デジタルファブリケーションの得意技の一つに「ラピッドプロトタイピング」があります。
「ラピッドプロトタイピング」とは、アイディアに対して、「すぐに試作品を出力して、手に取って触り確かめられる」ことです。

従来の物質の製作には、「依頼してから製作、送られてきて手に届くまで、少なくとも数日かかる」ことが常でした。

3Dプリンタなどのデジタルファブリケーションが自宅で可能または可能な施設に赴くことができれば、その場で「プリントアウト」して物質化することができるのです。
物質化が早いと、「欲しい」と思ったその「気持ち」や「身体」の状態が変化しないうちに、一緒に「手にとって」あーだこーだと話すことができます。汲み取った「想い」や、予想した「身体の動き」が少し違っても、すぐに「データ」を変更し、「物質」を作り変え、また、あーだこーだと話す。その繰り返しで「物質」を通して「理解し合う」のです。

デジタルファブリケーションのラピッドプロトタイピングする「手」は、「理解する態度を示す手」であると考えます。

「私は、私たちは、あなたを理解したい」を「触れて使って試せる形ですぐに目の前に提示できる」ってすごいことだと思いませんか?

#2 つくるための手

皆さんは「つくって」いますか?
皆さんのクライアントは「つくって」いますか?

それはどのくらい「自由」と「権利」、「創造性」と「責任」を伴っていますか?
以前のコラムにも書きましたが、
「最適な自助具・福祉用具を含めた環境づくりを諦めない」共に行う試行錯誤 
諦めないでやっていますか?
諦めて、「モノ」に身体を合わせて将来的に起こる弊害を予測できるのが、作業療法士などのセラピストです。「諦めずに自分の身の回りのモノを作る、人の身の回りのモノを作る」ことは、リスクでしょうか?本当はどちらがリスクなのか、考えた方が良いかもしれません。

「諦めずにつくる」態度は「責任」を伴います。

「製造物責任法」や「損害賠償保険の適応範囲」などを考慮せざるを得ないこともあります。

「つくる」作業は、時に「安心・安全な環境」が必要な段階があるかもしれません。

しかし皆さんは、「フローな状態」を体験したことがありますでしょうか?「フローな状態」とは、言い換えると、「能力と挑戦が丁度良いバランスで釣り合い、その人にとって最高のパフォーマンスをしている’’その時’’に集中している状態」です。人にとって、他に惑わされることなく、自身の感覚に浸れる最高の経験です。この経験は、「安心・安全」地帯から少し背伸びをしたところにあるのは間違いありません。そして、「誰かに言われたからやっている」のではなく、「自分が主体となって取り組んでいる」時にしか得られない感覚です。つくっている主体である自分が責任を負い、夢中になりながら「つくる作業を行う」権利が全ての人にあると私は思います。知らず知らずのうちに自ら放棄したり、クライアントから機会を奪っていませんか?

今一度、「つくる手」とは何か考えてみましょう。

#3つながるための手

「手でつながる」というと、「握手」や「手をつないで輪になる」などをイメージしやすいですね。「他者との連携やつながり」そして「手の温もりを伴う一体感」もイメージできます。

デジタルファブリケーション やその環境も、違わずその状況を創り出すことができます。

ファブラボの中で人々が、ものづくりを介してつながり、そこにある「道具」とつながる。
道具やものは、機械を介してインターネットで遠くの「仲間」とつながる。つくった「もの」や「こと」を介して、地域のコミュニティとつながり、同じビジョンを持ったコミュニティ同士は、世界でつながる。
ファブラボは現在、日本で20数カ所、世界で1300ヶ所以上です。
ファブラボの考えを礎にした「ファブシティ」も世界各国で生まれており、現在12カ国、18都市が「FabCity Manifesto」という同じビジョンでつながっています。

「温もり」も伝わります。

日本のファブラボは、ものづくりの工程をよく、「Fabble (https://fabble.cc)」というシェアサイトで共有しています。
行為の表現を、文化人類学的に比較する際に、エティック(etic)とエミック(emic)という考え方があるのですが、より内的なものの見方を「エミック」と呼びます。ICFで言い換えると「個人因子」を物語にのせ、ものづくりのレシピと共にシェアすることで、「温もりのあるものづくり」が伝えられます。一人一人の背景から生まれる物語をのせた「ものづくり」が次世代に伝えられることで、豊かな文化が醸成していきます。

まさに、多世代に渡りグローカルに時空を超えて「つながる手」であると言えると思います。
                   
皆さんも、ファブラボで是非この新しい3つの手の使い方

#1理解するための手
#2つくるための手
#3つながるための手

体験してみてください。